EU向け輸出で必ず立ちはだかるのがCEマーキングです。中でもEMCは、進め方を誤ると再試験による高額な費用と数ヶ月の遅延を招きます。初めて取り組む技術者が最初に押さえるべき基礎を整理します。
CEマーキングとは|「自己適合宣言」であることの意味
CEマーキングは、EU圏で電子機器を販売する際に必須となる要件です。ここで見落とされがちなのが、CEマーキングは第三者による保証ではなく、製造メーカー自身が規格を選定し評価を行う「自己適合宣言」だという点です。
つまり「何の規格で評価するか」の判断も、メーカー側に委ねられています。この指令・規格の選択を誤ると、再試験による高額な費用が発生し、合格までに数ヶ月を要して製品の発売スケジュールに重大な遅延を招くことになります。最初の選定を間違えないことが、実は最大のコスト削減につながります。
EMC(電磁両立性)とは|EMIとEMSの両立
EMCとは、性質の異なる2つの性能を両立させることを指します。
ひとつはEMI(エミッション)、すなわち自分がノイズを出さない性能です。たとえば、パソコンから放射されたノイズがラジオの受信を妨害してしまう。こうした「他機器への迷惑」を出さない性能がEMIにあたります。
もうひとつはEMS(イミュニティ)、すなわち外来ノイズに耐える性能です。たとえば、プリンタからノイズが発生してもパソコンが誤動作しない。こうした「外来ノイズへの耐性」がEMSにあたります。
「ノイズを出さない(EMI)」と「ノイズに耐える(EMS)」を両立させて、初めてEMCに適合したといえます。なお、適用される規格は製品カテゴリー(FA機器・マルチメディア機器・車載機器など)ごとに異なります。詳細は記事末尾の資料をご覧ください。
EMC試験で最も重要なのは「再現性」
EMC試験では、試験を行う時期や場所によって合否判定が変わってはなりません。そのため、試験台の配線や配置、測定器の設定といった環境の「再現性」を確保することが極めて重要です。
現場の一例を挙げます。ある試験では、配線がクロスしていたためにノイズが規格を超過していました。ところが、配線を整理しただけで約10dBノイズが低下し、合格に至ったのです。わずかな環境の違いが合否を分けることを示す事例だといえます。
こうした場面で後から原因調査や環境の再現ができるよう、1つの試験につき最低100枚以上の写真を記録として残すことを強くおすすめします。
EMCは「試験」ではなく「設計」で決まる
試験で落ちてから基板を改版し、再試験する。このループこそが、コストと納期を最も圧迫します。基板レイアウト・グランド設計・フィルタ設計の段階でEMCを織り込んでおくことが、遠回りに見えて唯一の近道です。
とりわけアナログ・デジアナ混載基板はノイズ設計の難度が高く、設計者の経験差がそのまま結果に直結します。
まとめ
CEマーキングは第三者による認証ではなく、メーカー自身が規格を選定し評価を行う「自己適合宣言」です。何の規格で評価するかの判断もメーカー側に委ねられるため、最初の規格選定を誤らないことが、再試験の費用や数ヶ月におよぶ納期遅延を防ぐ最大のポイントになります。
その中核となるEMCは、自分がノイズを出さないEMIと、外来ノイズに耐えるEMSの両立を指します。試験で合否を分けるのは環境の「再現性」であり、配線や配置のわずかな違いが約10dBもの差となって結果を左右することもあります。写真による記録はそのための有効な備えですが、こうした試験段階での対応は対症療法にすぎません。EMCは本来、基板レイアウトやグランド設計といった設計段階で決まるものだからです。
この点で、アナログ回路・基板の設計から実装、筐体製作までを一貫して手がけるシスプロには強みがあります。ノイズや温度変化の影響を受けやすいアナログ・デジアナ混載基板を数多く設計してきた実績があり、EMCを左右するノイズ対策を設計の初期段階から織り込むことができます。試験で落ちてから改版を繰り返すループを避け、購買担当者の管理工数を抑えながらEU輸出に耐えうる基板を実現します。CEマーキング・EMCを見据えた基板設計でお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。