低インピーダンスについて
プリント基板(PCB)における低インピーダンス化は、現代の高速・高周波回路設計において重要です。インピーダンス(Z)とは主に交流回路での電圧と電流の比の事、つまり電流の流れにくさを表す言葉です(単位はΩです)。ここまでの説明ですと、直流における抵抗値をイメージされると思いますが、概念的には近いものがあります。ただし、インピーダンスはあくまで電圧と電流の比の事であり、抵抗器やコイル、コンデンサのように具体的な形があるものではありません。インピーダンスが低いほど、信号はよりスムーズに、ノイズの影響を受けずに伝わります。
低インピーダンスがプリント基板にもたらす主要なメリット
低インピーダンスがプリント基板にもたらす主要なメリットは、「信号品質の向上」と「ノイズ・EMI対策」の二点に集約されます。
①信号品質(シグナルインテグリティ)の劇的な向上
反射の抑制とインピーダンス整合
高速信号が伝送路(配線)を流れる際、インピーダンスが不連続な箇所があると、信号が反射し、波形が乱れます(リンギングやオーバーシュート/アンダーシュート)。
低インピーダンス化、特に信号線とリターンパス(GNDや電源層)を含めた系全体のインピーダンスを一定に保つインピーダンスコントロールを行うことで、この反射を最小限に抑えられます。これにより、信号の完全性(シグナルインテグリティ)が保たれ、通信の信頼性が向上します。
最大電力伝送の実現
インピーダンスを適切に整合させることで、信号源から負荷へエネルギーが最も効率よく伝達され、反射によって失われるエネルギーが減少します。これは、特に大容量のデータ伝送を行う高速インターフェース(PCI Express, USB 3.0など)において、安定した動作に直結します。
②ノイズ・EMI対策(エミッション対策)の強化
ノイズ電流のリターンパス確保
ノイズ電流や高速スイッチングによる電流は、必ずリターンパス(GNDや電源層)を通って戻ります。このリターンパスのインピーダンスが高いと、ノイズがGNDプレーン全体に広がり、他の回路に悪影響を及ぼしたり、不要な電磁波として放射されたりします。
GNDプレーンや電源プレーンを基板内に形成することで、低いインピーダンスに調整し、ノイズの広がりを抑制できます。
共振現象の抑制
プレーン間の低インピーダンス化は、基板のGNDと電源層の間で発生し得る共振現象を抑制する効果もあります。共振は特定の周波数でノイズを増幅させ、EMI(電磁妨害)の原因となりますが、低インピーダンスはこれを防ぎます。
インピーダンスマッチングによる課題解決事例
インピーダンスマッチングにより高周波対策
お客様の課題
通信機器用RF基板において、高周波電力の増幅のためアナログ回路が用いられています。従来、送信信号を増幅させた後に高調波が発生し電流が歪み、通信不良が起こるという不具合が発生していました。高調波の抑制対策を行う必要があり、アナログ回路・基板の設計に強みをもつ当社におこえかけいただきました。
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インピーダンスの最適化で反射ノイズの抑制
お客様の課題
4層のRF基板の設計依頼を頂戴しました。RF通信回路のアンテナ部分は反射ノイズが発生しやすく、ノイズ対策が必須の箇所となります。
当事例のお客様は、従来依頼している基板設計メーカーだとインピーダンスコントロールが最適化できず、ノイズが発生してしまうというお悩みをお持ちで、アナログ回路・基板のノイズ対策に強みをもつ当社にお声かけ頂きました。
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