厚銅基板について
当技術コラムでは、小面積に大電流を流したり、高い放熱性を求める際に有効とされる厚銅基板についてご説明します。回路・基板設計担当者の皆様、是非参考にしてください。
厚銅基板のメリット
数Aしか流さないような、ごく一般的なプリント基板は外層の銅箔厚は18μmか35μmというところでしょう。微小電流しか流れないデジタル基板であれば18μm以下の12μmや5μmの厚さでも問題なく動作する基板が作れます。一方、昨今では面積があまり取れないエリアに大電流を流さなければいけないような車載関係の基板は立体的に面積を増やして対応することが可能となります。またアルミなどに比べて銅は熱特性が優れているため高輝度LEDなどの高発熱デバイスやハイパワーデバイスの放熱をするヒートシンクを兼ねた使い方もできます。
厚銅基板の熱伝導率
銅の熱伝導率は398(単位:W/m・k)で金やアルミより高い値を誇ります。この特性を活かして銅の厚みを増やせば当然ながら基板全体に熱を逃がし放熱効果が高まります。
金属 |
熱伝導率(W/m K) |
ダイヤモンド |
1000~2000 |
銀 |
420 |
銅 |
398 |
金 |
320 |
アルミ二ウム |
236 |
真鍮 |
106 |
鉄 |
90.9 |
ステンレス |
84 |
厚銅基板の放熱性
普通の基板ではやはり放熱には限界があります。基板上のデバイスの熱を逃がす方法は部品を実装後にヒートシンクなどを取りつけて対応することが多いかと思います。これらの問題を解決すべく、銅に厚みを持たせて上記の熱伝導の良さを活かして基板全体で熱を逃がすことが厚銅基板では期待できます。またキャビティー構造や銅ポストを立てるなどしてデバイスから直接銅に熱を逃がせばその効果は絶大です。もう一つの効果としては放熱性が高まれば部品の動作温度も下がり効率も落とさず、尚且つ長寿命化も期待できるため、製品そのものの性能を損なうこともなくなります。
厚銅基板と大電流
厚銅基板の放熱性の有効性以外にもう一つ大きな特徴である大電流を流すということについて簡単に解説します。
厚銅基板に大電流を流す
普通の製造方法で対応できる銅箔の厚みは35~70μm位ですが昨今のロボットやEVなどでは数百アンペア流れることもあります。基板上に大電流を流す場合はバスバーという金属の棒をケーブルや電線の代わりに実装することで対応させることがあります。厚銅基板はこのバズバーの代わりに数百μmの銅の厚みを持たせた経路を基板上に作り、線幅に依存するのではなく立体的に体積を稼ぐことで大電流を流すことが出来るというものです。
厚み・線幅・電流値について
基板業界ではご存知のように銅箔厚35μmでパターン幅(線幅)1.0㎜には1アンペアを流せるという認識があります。つまり理論的に考えれば、この3つのパラメータを変えることで様々な組み合わせが検討出来ます。
例えば100アンペアを流したい場合
①銅箔厚35μmであれば線幅100㎜程度 基板面積は十分に取れる
②銅箔厚70μmであれば線幅50㎜程度 基板面積には少々制約がある
③銅箔200μmであれば線幅17~18㎜程度 基板面積には限りがある
などの検討が可能になるということになります。(正式には基板製造メーカとの調整が必要になります)
厚銅基板の種類、どんな基板があるのか?
ここからは厚銅基板の種類についてご説明します。厚銅基板にも色々なメーカによる製造方法があります。少し代表的な例を挙げてみます。
①バスバー(内蔵)基板
金属加工したバスバーを内層の回路と積層する(埋め込む感じです)ことで厚銅基板を製造するものです。外付けでバスバーを取り付ける組配コストを抑えるメリットがあります。
②キャビティー基板
内層の厚銅の部分まで基板ザグリ加工をして導体をむき出しにし、発熱デバイスを直接放熱させることが出来たり筐体と接続させて熱を逃がすことが出来ます。
③銅インレイ基板
高熱を発する部品の直下に銅材を圧入することで熱を直接逃がせる高放熱基板です。
④同一面異厚銅基板
同一面に銅の厚みが違うパターンを形成することが出来ます。信号系とパワー系を同一面で設計をすることが出来、基板の小型化に貢献できます。
超厚銅基板とは?
厚銅基板に近いワードとして、超厚銅基板というものがあります。超厚銅基板の決まった定義はありませんが300μmを超える厚みを持った基板を超厚銅基板と考えると昨今では厚銅の種類は豊富になってきており2000μmの厚銅基板を製造することも可能になっています。各基板メーカさんによって製造方法も違う部分ですので超厚銅基板を製造する場合は事前打ち合わせをしっかりと行って必要な効果が見込めるかどうかを確認しておくことが大切になってきます。
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