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多層基板とは?特徴や種類、メリット・デメリットを解説します!大電流対策事例もご紹介

 

本記事では、多層基板について詳しく解説します。
どんな特徴があり、またどのような種類があるのでしょうか。
メリット・デメリットについても解説します。
最後に、多層基板での大電流対策事例もご紹介します!

 

多層基板とは?

多層基板とは、導体層が3つ以上ある基板のことです。
銅箔と絶縁層を交互にミルフィーユ状に重ねていくことで製作します。
導体層2層分でパターン配線をしてもなお配線エリアが足りない場合に、導体層を3つ以上に増やして多層化します。

そもそも基板の仕組み・構造は?多層基板含む基板の種類

基板は絶縁体と導体層で構成されており、その構造に応じて、いくつかの種類に分類されます。

構造で分類

片面基板

片面のみにパターン配線があるプリント基板です。銅箔付きスルーホールがないため、配線を交差することが出来ず、複雑なパターン配線は出来ない基板です。コストは抑えられます。

両面基板

両面に配線パターンがあるプリント基板です。スルーホールが使用出来るため、両面にパターン配線が可能になり、片面基板よりも複雑なパターン配線が出来ます。

フレキシブル基板

曲げることが可能な素材で作られた基板であり、可動部品や曲面デバイスに使用されます。

多層基板

両面基板の内部にも導体層を形成した基板です。導体層と絶縁層を交互に積層し複数層で構成されます。
各導体層にパターン配線が施せるため、両面基板よりもさらに複雑なパターン配線が可能になり、層数が増えるほどパターン配線も増やすことができます。

フレキシブル基板

薄く柔らかい素材で作られたプリント基板です。通常の基板と比べて、軽量で薄く、曲げたり折りたたんだりする事が可能です。これにより、様々な形状や曲面にもフィットが可能です。モバイルデバイス、ウェアラブルデバイス、医療機器など様々な分野で使用されています。

そのほか、貫通多層基板やIVH基板、ビルドアップ基板がありますが、詳しくは以下で解説いたします。

材質で分類

紙フェノール基板

紙の基材に強度や絶縁性等に優れているフェノール樹脂素材を含ませたプリント基板です。経済性や加工性にも優れています。ただし熱や湿度に弱く、耐久性は低いです。一般的に片面基板として使用されています。FR-1とも表記されます。

紙エポキシ基板

紙の基材に強度や絶縁性等に優れているエポキシ樹脂素材を含ませたプリント基板です。紙フェノール基板よりも耐湿性、耐熱性や電気的特性に優れています。ガラスエポキシ基板よりは劣ります。一般的に片面基板として使用されています。FR-3とも表記されます。

ガラスコンポジット基板

ガラス不織布とガラス布を混ぜ合わせた基材に、エポキシ樹脂を含ませたプリント基板です。配線間のショートに強い面や、ガラスエポキシ基板より柔軟性があります。電気特性はガラスエポキシ基板と同等ですが、機械的特性や寸法の安定性は劣ります。一般的に両面基板として使用されています。CEM-3とも表記されます。

ガラスエポキシ基板

ガラス繊維を布状に編んだ、ガラス織布にエポキシ樹脂を含ませたプリント基板です。電気的特性、機械的特性に優れています。難燃性、導電率、耐久性も良い。プリント基板の中で、最も多く使用されている基板です。略してガラエポとも呼ばれ、一般的に両面基板以上の多層基板として使用されています。FR-4とも表記されます。

テフロン基板

ガラス布にフッ素樹脂を含ませたプリント基板です。電気的、機械的特性にも優れています。テフロン基板は誘電率、誘電正接などの高周波特性に優れた、高周波用途で一番多く使用されている基板材質です。

アルミナ(セラミックス)基板

アルミナ系セラミックスを材料として活用しているセラミック基板です。高耐熱性、高絶縁性、高熱伝導性、高機械強度、の特性を持ちます。高い放熱性に加え、誘電率が安定しており誘電正接が低い為、高周波伝送損失も低く抑えられ、高周波基板に実用化されています。

多層基板にはどんな種類があるのか?

 多層基板にはどんな種類があるのでしょうか。
多層基板の種類は大きく分類すると、以下の3つに分けられます。

 

①貫通多層基板

②ビルドアップ基板

③IVH多層基


ここでは、①②の貫通多層基板ビルドアップ基板について詳しく解説します。

 

貫通多層基板とは

貫通多層基板とは、スルーホールと呼ばれる導通用の穴で層間の回路を接続している基板のことです。
スルーホールとは、NCドリルマシンで基板に空けて銅メッキをした貫通穴のことです。

貫通多層基板は主に電源やGNDを強化したい場合やある程度配線密度が高い場合、インピーダンスをコントロールしたい場合などに使用されます。

 

ビルドアップ基板とは

ビルドアップ基板とは、レーザービアと呼ばれる穴で層間の回路を接続している基板のことで、表から裏まで穴が貫通しないことが特徴の基板です。レーザービアとは、レーザービームで基板に空ける100μm程度の穴のことです。

ビルドアップ基板は高密度な配線が可能で、主にファインピッチの部品が搭載されるカーナビ、パソコン、ゲーム機などに使用されています。

>>ビルドアップ基板・ビルドアップ電源基板設計に関する記事はこちら

多層基板のメリット・デメリットとは?

多層基板にはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

多層基板のメリット

多層基板のメリットは基板の多層化によって、配線パターンを基板の表面だけでなく、内層にも配線でき、部品を実装できる面積を増やせることにあります。
片面・両面基板にて、回路規模を増やそうとすると、回路の線幅やギャップを狭めることが選択肢としてあげられますが、回路形成精度を保つことが難しく、歩留まり率の低下などが問題でした。
しかしながら多層基板であれば、無理な線幅やギャップでパターンを引かなくてもよくなり、歩留まり率を高く保ったまま製作が可能です。

多層基板のデメリット

多層基板のデメリットは、内層と外層の回路形成の工程を経てから内外層を積層し、その上で回路形成の二次加工などを行なうため、片面・両面板の2倍もしくはそれ以上の工数がかかる点、費用も高くなってしまう点です。
また、内層のパターンが外側からは目視で確認できないため、目視検査が出来ないことや、内層のパターンの修正ができないことがあげられます。

 

ここまで多層基板のメリットとデメリットを紹介してきました。
実は、多層基板には実装できる面積が増えるなど以外にもメリットがあります。
今回は、もう一つのメリットをご紹介します。

 

多層基板での大電流・高電圧対策法

そのメリットとは、多層基板ですと大電流・高電圧対策ができることです。

例えば、2層板で、高電圧に耐えられる沿面距離と大電流に耐えられるパターン幅が確保できなかった基板があるとします。
これを4層基板にすると電源やGNDパターンを内層で引くことで、必要な沿面距離・パターン幅を確保することが可能となります。

当社では、実際にお客様に対して、多層基板への変更提案により、大電流対策・高電圧対策ができた事例がございます。詳しくは以下のページよりご覧ください!

多層基板への変更で、大電流・高電圧対策after

>>【課題解決事例】多層基板への変更で、大電流・高電圧対策

 

>>【製作事例】16層基板の製作事例はこちら!

 

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まとめ

いかがでしたでしょうか。
多層基板についてご理解頂けましたでしょうか。

当社では、大電流対策を施した基板製作を行っております。
以下のページにて大電流対策法について解説しております。
こちらもぜひご覧下さい。

>>大電流対策のポイント!

 

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