当技術コラムでは、基板でノイズ対策に用いられる「シールド」について解説します。
また、具体的なノイズ対策方法や、アナログ回路・基板 設計製作.comが行った回路設計における課題解決事例もお伝えします!
アナログ回路・基板設計担当者の方は、是非ご覧くださいませ!
ノイズ対策のためのシールド
ノイズのコラムでも書きましたが基板においてはノイズを放射しない(EMI)ことと、ノイズの影響を受けない(EMS)ことが大変重要になることはお伝えしました。
それではこの2つをクリアするにはどうするべきかという、ひとつの解決策が今回のテーマとなります。
シールドとは?
シールドという言葉を調べてみると遮蔽という意味や、一定空間を他の電界・磁界から遮断すること、金属板等の導体により空間を囲み導線等回路の一部や装置全体をおおい、外部の電波による妨害等を防ぐ「静電シールド」という意味や、強磁性体で電気機器などを囲んで磁気的に外部の影響を遮断する「磁気シールド」となっています。
機器を外界から隔てるために囲いを設けたり、ケーブルにシールドを施したりといった、いわゆるノイズ対策のときに利用するシールドは「電磁波シールド」です。
シールド性能はdB(デシベル)を使って表現します。
ノイズを抑える電磁波シールドの原理
電磁波シールドの効果は3つの損失によってもたらされます。電磁波シールドの原理はシェルクノフの式によると反射損失と吸収損失、さらに多重反射損失の3つの項目の和で表され、この3つによって電磁波エネルギーを滅衰させることにより、人体への危険性や精密機器への影響が回避されます。
ここではそれぞれの詳細な計算式は明記しませんが、シールド効果は、
【SE=R+A+M】
R:反射損失
A:吸収損失
M:多重反射損失
で表されます。
シールドの材質
特性インピーダンスZoと比較して、シールド材のインピーダンスZが低い場合に反射係数は大きくなるため、金属などの導電率の高い材料ほど高いシールド効果が得られます。
金属にも導電率の違いがあり、シールド材としては比較的導電率が高く価格も抑えられる銅やアルミがよく使用されます。
金属板をシールドに使うときは、
(i)シールド材を厚くする(減衰損が大きくなります)
(ii)導電率を大きくする(減衰損、反射損の両方が大きくなります)
(iii)透磁率を大きくする(減衰損が大きくなります)
といった点を実施します。
シールドを用いた具体的なノイズ対策
さて、実際に基板を製造した際にどのように対策を取っていくかが一番気になる点だと思います。高周波回路を設計する際、EMC対策としてノイズ発生源や外来ノイズに弱い回路部については、基板設計時に初めからシールドケースを取り付けられるようにGNDベタのレジストを剥がしておきケースを半田付け可能な設計をすることがしばしばあります。
これはエミッションとイミュニティの両方に効果を発揮する対策です。主に空間伝導によるノイズの対策としてよく見かける対策で、金属で回路全体を覆い被せることによりフレーム(FG)もしくはGNDに放射ノイズを抑えることが出来ます。
注意すべき点は、シールドケースにパターンを通す切り欠きが多すぎると効果が薄れる点です。シールドケース内でノイズの影響が大きい信号の処理ができ、INOUTの信号はそれほどノイズの影響を受けないのであれば部品面側のシールドは完全に覆い、半田面から信号を引き出す方法が考えられます。
また、どうしてもインピーダンスの問題などからシールドケースと同一面で信号を通さなければいけない場合は、必要最低限の信号を1カ所の切り欠きから通せるようにシールドケースに入れる回路部をどこまでにするかを検討する必要があります。
パターン設計におけるシールドの実現
クロック信号やクリティカルな信号については、GNDでガードをする設計は基板上で考えられる一番ポピュラーな方法です。しかしながら、ただGND信号のパターンでガードをするだけでは逆にアンテナになってしまうことがありますので注意が必要です。
ガードをする上で一番重要なのは、GNDのガードパターンは端点をオープンにしてはいけないことと、ガードパターンにはシールドビアを可能な限り打つことが大切です。特に、動作周波数が高い信号線周辺には、GNDビアを多数打つことによりシールド効果が上がります。
また、層間のGNDのインピーダンスを一定にすることにより放射を防ぐ事が出来ます。
この辺りの詳細は姉妹サイトの「高周波基板.com」にも載せてありますのでそちらをご覧下さい。
もっとシールド効果を高める方法としては、多層板の場合は内層にクリティカルな信号を配線し、信号線の上下層もGNDとして挟み込みストリップラインを形成して、更に信号線の両側もGNDパターンでガードをすることで上下左右をGNDで囲い込み、同軸線のような形にするという方法もあります。
シールドを考慮した回路設計事例をご紹介!
アナログ回路・基板 設計製作.comはシールドを考慮した回路設計を行っております。設計事例をご紹介します。
設計事例① 耐ノイズ設計により放射ノイズを抑え要求仕様をクリア
当事例のお客様は、車載用の基板において、要求仕様をクリアできないというお悩みをお持ちで、当社にご相談頂きました。
一例として、「クロック信号はノイズの影響を受けやすく、またノイズ発生の原因になるためシールド配線を行う」などの対策をすることで、この設計により、放射ノイズを抑え、他10項目の要求仕様を満たすことができました。
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設計事例② 層数の最適化によりノイズ・高周波対策
画像映像処理用基板において、高速信号が用いられる仕様となっていました。高速信号は高周波であり、通常の信号より反射しやすく、クロック信号のノイズを始めとして強い力を持つノイズが発生します。そのため、高周波対策、ノイズ対策を施した基板設計が必要であり、アナログ回路・基板設計に強みを持つ当社にお声かけ頂きました。
層数を最適化した基板提案により、ノイズの発生を抑えることができました。
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設計事例③ GNDとRFラインを等距離に配置しノイズ回避
ノイズの発生していたRF基板において、GNDとRFラインを等距離にすることで、ノイズによる不具合を解消することができました。
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アナログ回路・基板 設計製作.comでは、技術資料を無料で発行しております。是非ご確認ください。
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高電圧や大電流の電源基板、高周波のRF基板など、アナログ回路・基板の設計は複雑で難易度が高いものとされています。
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シールドを考慮した回路の設計・製作は当社にお任せください!
シールドについてご理解頂けましたでしょうか。
アナログ回路・基板 設計製作.comを運営するシスプロは、シールドをはじめとしたノイズ対策を施したアナログ回路・基板の設計に強みを持ちます。
アナログ回路・基板の設計にお困りの皆様、お気軽に当社にご相談くださいませ!
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