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SI解析で基板設計の品質を向上させるには?

SI解析(シグナルインテグリティ)とは?

SI解析とは、Signal Integrity(シグナルインテグリティ)の略称であり、日本語では「信号の完全性」を意味します。電子回路において、信号が送信側(ドライバ)のICから受信側(レシーバ)のICへ伝送される過程で、その電気的品質が損なわれずに正しく伝わるかを評価・検証する一連の解析手法です。現代の電子機器に搭載されるプリント基板の設計品質を左右する、極めて重要な工程として位置づけられています。

デジタル信号は、本来であれば綺麗な矩形波として伝わることが理想です。しかし、電子回路の動作周波数が高くなるにつれて、基板上の配線パターンは単なる導体ではなく、固有のインピーダンスを持つ「伝送線路」として振る舞うようになります。この伝送線路上を高速な信号が通過する際、波形には「リンギング」や「オーバーシュート」といった歪み、あるいはタイミングのずれや信号の「なまり」など、様々な品質劣化の事象が発生します。これらの現象は、受信側のICがデジタル信号を正しく認識できなくなる原因となり、最終的にはデータエラーやシステムのフリーズといった致命的な不具合に直結する可能性があります。

 

SI解析の目的とは?

 

SI解析の最大の目的は、プリント基板を実際に製造する前に、シミュレーションによって信号品質の問題点を予測し、解決することにあります。

主に、信号の「反射」や「クロストーク」といった現象が設計通りに収まるかを確認します。これにより、試作品が完成してから問題が発覚する「手戻り」を未然に防ぎ、開発期間全体の大幅な短縮を実現します。

例えば、設計段階で理想的な配線長を維持できるか、もし維持できない場合にダンピング抵抗の追加やパターン修正といった対策で反射を十分に抑制できるかを検証します。信号の反射は、配線途中でインピーダンスが変動することで発生するため、周波数が高くなるほどその影響は深刻になります。このような問題を事前に潰し込むことが、SI解析の重要な役割です。

 

 

SI解析を検討すべき代表的な3つのケース

 

具体的にどのような場合にSI解析を検討すべきなのでしょうか。信号品質のトラブルに繋がりやすい代表的な現象を3つのケースに分けて解説します。

 

ケース1:信号の「反射」による波形の乱れ

 

信号は、インピーダンスによって定められた一定の通り道をスムーズに進むことを前提としています。しかし、配線幅の変化、ビア、部品やコネクタとの接続部などでインピーダンスが急に変わると、信号の一部が跳ね返る「反射」が発生します。

反射した信号は元の信号と干渉し、オーバーシュートリンギングといった波形の乱れを引き起こします。これによりICが信号を正しく読み取れなくなるため、特に信号の立ち上がりが速い(周波数が高い)回路では致命的な問題となります。SI解析では、ダンピング抵抗の追加やパターン修正など、反射を抑制するための最適な対策を事前に検討できます。

 

ケース2:ノイズ干渉「クロストーク」

 

基板上で隣り合った配線同士が近すぎると、一方の信号が電磁的に結合し、もう一方の配線にノイズとして影響を与えてしまう現象が「クロストーク」です。

本来、適切なGND配置やインピーダンスコントロールといった設計ルールで防ぐべき問題ですが、高密度な設計では意図せず発生してしまうことがあります。特に、ノイズに弱いアナログ信号の隣を高速なデジタル信号が通るようなレイアウトでは、性能低下の大きな原因となります。SI解析は、このような潜在的なノイズ干渉のリスクを可視化し、設計段階での修正を可能にします。

 

ケース3:信号タイミングのズレ「スキュー」と「ジッター」

 

DDRメモリバスのように、複数の信号が厳密なタイミングで同時に目的地へ到着する必要がある回路では、信号のタイミング管理が非常に重要です。

  • スキュー: 主に配線長の差によって、各信号の到着時間に生じるズレ。
  • ジッター: 信号そのもののタイミングが、周期的に揺らいでしまう現象。

これらのタイミングのズレは、ICがデータを誤って認識する原因となり、システムの致命的なエラーに繋がります。

 

当社が提供する高度なSI解析の特徴

 

これまでご説明した「反射」や「クロストーク」といった問題は、通常の基板設計ツールだけでは予測・解決が困難なケースが少なくありません。私たちは、こうした複雑な課題を解決するため、専門的な知見と独自の解析技術を駆使した、SI解析をご提供しています。

 

①IBISモデルで実測困難なデバイス内部の波形を可視化

 

通常、基板上の信号波形は測定器(オシロスコープ)で観測できますが、ICチップの内部で信号がどうなっているかまでを直接見ることはできません。私たちは、ICメーカーが提供する電気特性のデータ「IBISモデル」を活用することで、シミュレーション上でIC内部の波形を正確に再現します。これにより、問題が基板の配線にあるのか、あるいはICの特性に起因するのかを切り分け、より本質的な対策を立てることが可能になります。

 

②高精度な「電磁界ベース解析」で問題の根本原因を特定

 

一般的なSI解析よりもさらに高精度な「電磁界ベース解析」に対応している点も、私たちの大きな強みです。これは、基板上で目に見えない電気と磁気の流れ(電磁界)の振る舞いを3次元で忠実にシミュレーションする高度な技術です。特にギガビットクラスの超高速信号が扱うような微細な影響まで捉えることができ、他の手法では見つけられなかった問題の根本原因を特定します。プロジェクトごとに最適な解析手法を組み合わせ、精度の高いソリューションを提供します。

 

③解析に基づき、提案から基板設計まで対応

 

私たちは、シミュレーションを行って問題点を報告するだけで終わりではありません。その解析結果に基づき、「どのようにすれば問題を解決できるか」という具体的な改善策をご提案します。さらに、ご要望に応じてその改善策を反映したプリント基板の設計(アートワーク)まで、一貫して対応することが可能です。もちろん、「シミュレーションだけを依頼したい」といったご要望にも柔軟にお応えしますので、お気軽にご相談ください。

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