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サージ電圧(スパイクノイズ)とは?回路設計における4つの対策ポイント

サージ電圧(スパイクノイズ)とは?発生のメカニズムを解説

回路設計において、安定した動作を阻害する最大の要因の一つが「サージ電圧」です。サージ電圧とは、電気回路に加わる定常的な電圧を大幅に超えて、極めて短い時間に発生する過渡的な高電圧を指します。設計現場ではその鋭い形状から「スパイクノイズ」とも呼ばれ、ナノ秒からマイクロ秒という一瞬の間に、数百度、時には数千ボルトに達する電圧が発生する現象です。

回路設計においてこれらのサージ電圧(スパイクノイズ)を無視することは、製品の破壊に直結します。特に近年の半導体、電子部品などは、微細化に伴い耐圧が低下している傾向にあり、わずかなスパイクノイズが絶縁破壊を引き起こすリスクが高まっています。理論上の計算値だけでなく、物理的な実装環境を含めた発生メカニズムの理解が、回路設計の第一歩となります。

サージ電圧が発生する主なメカニズム

サージ電圧が発生する原因は多岐にわたります。

開閉サージ(内部サージ)

最も頻繁に発生するのが、リレー、スイッチ、モータ、トランスなどのインダクタンス(L成分)を含む負荷を遮断した際に発生する逆起電力です。電流が急激に変化する際、インダクタは電流を維持しようとして、高い電圧を発生させます。これがスイッチング素子や制御ICにダメージを与えます。

 

外部サージ(雷サージ・静電気サージ)

落雷による誘導雷サージや、人体から放出される静電気放電(ESD)がこれに該当します。これらは回路の外部から侵入するため、基板の入力保護段での確実な対策が求められます。

 

サージ電圧を放置すると起きるリスク

サージ電圧(スパイクノイズ)を対策せずに放置することは、製品にとって非常に深刻な事態を招きます。

電子部品が物理的に「壊れる」

最も大きなリスクは、ICやトランジスタなどの部品が「物理的に破壊される」ことです。電子部品には、耐えられる電圧の限界(定格電圧)が決まっています。サージ電圧は、この限界を一瞬で大きく超えてしまいます。 例えるなら、100Vまでしか耐えられない容器に、一瞬だけ10,000Vの巨大な圧力がかかるようなものです。その衝撃で部品の内部が焼き切れたり、電気を遮断している壁が突き破られたりして、製品は二度と動かなくなってしまいます。

回路が「パニック(誤動作)」を起こす

部品が完全に壊れなくても、サージ電圧は回路を流れる正しい信号をかき乱します。デジタル回路が「0」や「1」という情報をやり取りしている最中にスパイクノイズが入り込むと、回路はそれを「正しい命令」だと勘違いしてしまいます。 その結果、システムが突然フリーズしたり、機械が予期せぬ動きをして暴走したりといった誤動作を引き起こします。「なぜか時々動かなくなる」という原因不明のトラブルの多くは、こうしたノイズ対策の不足が原因です。

目に見えない「ダメージ」が蓄積する

サージ電圧が加わっても、その場では壊れずに動いている場合があります。しかし、安心はできません。強い電圧の衝撃を受けるたびに、部品の内部では目に見えないミクロな傷がついていきます。 これを繰り返すと部品は徐々に弱っていき、本来なら10年使えるはずの製品が1年で寿命を迎えるといった事態を招きます。出荷直後は問題なくても、お客様の手元に渡ってから故障が多発するという、メーカーとして最も避けたい事態に繋がります。

サージ電圧の具体的な対策4選

1. スナバ回路

抵抗とコンデンサを組み合わせた、衝撃を和らげる「クッション」のような回路です。スイッチを切った瞬間に発生する激しい電圧の跳ね上がりを吸収し、なだらかにすることで、部品が焼き切れるのを防ぎます。

2. ダイオード(TVSダイオード)の利用

スイッチを切った時にコイルから逆流しようとする電気の通り道を、ダイオードで作って逃がしてあげます。電気の「一方通行のバイパス道路」を作るイメージです。TVSダイオードというサージ対策専用のダイオードが存在し、静電気や電源のバラつきによる想定外のサージから後段のICを保護することができます。

3. バリスタによる保護

特定の電圧を超えると急に電気を通す「身代わり」の部品です。普段は電気を通しませんが、巨大なサージが来た時だけ自ら電気を逃がす道となり、後ろに控える高価なICや精密部品に高い電圧がいかないよう守ります。

4. 基板のパターン設計の見直し

部品の「置き方」や「配線の引き方」の工夫です。配線が長かったりループが大きかったりすると、そこがアンテナのようにノイズを拾ったりサージを大きくしたりします。電気の通り道を整理する、目に見えない重要対策です。

これら4つの対策を適切に組み合わせることが、壊れない基板作りの基本となります。

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