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スナバ回路とは?スイッチング電源のノイズ、リンキング対策

電子機器の高性能化に伴い、回路設計において「ノイズ対策」は避けて通れない課題です。この課題解決の手段の一つとして「スナバ回路」と回路設計に配置することがあります。。本記事では、スナバ回路の基本的な役割や、メリット、デメリット、そしてアナログ回路・基板設計のプロフェッショナルである株式会社シスプロが実践する「効果的な配置(パターン設計)のノウハウ」について解説します。

 

スナバ回路とは?役割と仕組み

スイッチング電源の設計現場において、スナバ回路は回路保護とノイズ低減のために使用されます。ここでは、なぜスナバ回路が必要なのか、その物理的なメカニズムと基本的な種類について解説します。

 

スナバ回路が必要となる主な原因

スナバ回路が必要となる主な原因は、回路内の配線やトランスなどが持つ「寄生インダクタンス」にあります。 スイッチング素子がターンオフ(電流を遮断)する際、電流の変化率と寄生インダクタンスによって、非常に高い逆起電力が発生します。これを「サージ電圧(スパイクノイズ)」と呼びます。この電圧は素子の耐圧を超えることがあり、最悪の場合は破壊に至ります。

さらに、このサージ電圧をきっかけとして、寄生インダクタンスとスイッチング素子の寄生容量の間で共振が発生します。これが「リンギング」という、信号が目標の電圧値を通り越してしまい(オーバーシュート/アンダーシュート)、その後しばらく振動する現象です。リンギングは放射ノイズ(EMI)となり、周辺回路への干渉やEMC試験での不合格要因となります。

 

スナバ回路の役割とは?

スナバ回路の役割は、これらの余分なエネルギーを吸収し、回路を安定させることです。 具体的には、コンデンサ(C)を利用して急な電圧の立ち上がりをバイパスさせ、ピーク電圧を抑制します。同時に、直列に接続された抵抗(R)によって、LC共振の振動エネルギーを熱エネルギーとして消費させます。 つまり、電気的な振動を熱に変えて逃がす役割を果たしており、これによって波形を整え、ノイズの放射を低減させています。

 

代表的な種類(RCスナバ・RCDスナバ)

スナバ回路にはいくつかの種類がありますが、用途に応じて使い分けられます。

  • RCスナバ回路
    抵抗(R)とコンデンサ(C)を直列に接続した最も一般的な構成です。構造が単純で、サージ電圧の抑制とリンギングの減衰の両方に効果があります。

  • RCDスナバ回路
    抵抗とコンデンサにダイオード(D)を加えた構成です。サージ電圧が発生した際、ダイオードを通じてコンデンサに急速に充電し、電圧をクランプ(制限)します。蓄えられたエネルギーは抵抗を通じて放電されます。

 

スナバ回路によるスイッチング電源のノイズ、リンギング、静電気(ESD)対策

スナバ回路は、電源回路の信頼性を守るために、主に以下の3つの重要な役割を果たします。

1. ノイズ対策
スイッチング時に発生する急激な電圧変化(サージ)を吸収し、素子の破壊や誤動作を防ぎます。

2. リンギング抑制
配線の寄生成分による振動波形(リンギング)を熱エネルギーとして消費し、外部への放射ノイズ(EMI)を効果的に低減します。

 

スナバ回路のデメリットと注意点

スナバ回路はノイズ低減、リンキング対策に有効ですが、回路設計において無視できないデメリットがあります。「とりあえず入れておけば安心」という安易な設計は、機器全体の効率低下や熱設計の破綻を招く可能性があります。

スナバ回路のデメリットは「発熱する」ということです。スナバ回路は、コンデンサが吸収したサージやリンギングのエネルギーを、抵抗(R)で熱エネルギーに変換して消費する仕組みです。物理的にエネルギーを熱として捨てるため、ノイズを抑制した分だけ確実に発熱します。

もし発熱がNGな場合は、スナバ回路のみに依存せず、「基板のパターン設計そのもの」を見直してノイズ発生源を抑える根本的な対策が必要です。

 

当社のアナログ回路・基板設計のプロフェッショナルとしての強みと設計ノウハウ

アナログ回路・基板 設計製作.comを運営するシスプロは、昭和49年に創業して以来、高周波基板、高電圧基板、大電流基板など、高度な知識・ノウハウが必要とされるアナログ回路基板を設計してきました。

アナログ回路基板の設計には、高度な知識及び経験が必要になります。さらに、高周波基板や高電圧基板、大電流基板を設計する上では、ノイズ・放電などの様々なトラブルを回避する設計をすることが必須となります。

私たちは、RF基板、電源基板を始めとしたアナログ基板や、A/D、D/A変換、フィルタ、OPアンプ回路などのアナログ回路に精通したプロフェッショナルとして、回路・基板の設計を通して皆様に高品質なプリント基板を提供しています。プリント配線板設計技能士の資格を持ったエンジニアよる設計で、高周波・高電圧・大電流の基板においても最適設計をさせて頂くことをお約束します。

 

スナバ回路を用いたスイッチング電源の設計事例

リンギングを抑制するため、RCスナバ回路を追加することがありますが、ICのスイッチング端子から離れて配置すると、配線インダクタンスにより発生したスパイクノイズを吸収することはできません。

スナバ回路は、ICのスイッチング端子とGND端子の直近に配置することで、効果的にノイズを吸収することが出来ます。電源ループを小さくする事で、ノイズを低減できます。

 

ノイズ対策・回路設計のご相談はシスプロへ

ノイズ対策やスナバ回路の設計でお困りの際は、ぜひシスプロにご相談ください。 私たちはアナログ回路・基板設計のプロフェッショナルとして、計算上の数値だけでなく、実装環境や熱対策まで考慮した最適なソリューションを提供します。

「ノイズが消えない」「回路設計がうまくいかない」といった現場の課題に対し、回路設計から基板アートワークまでトータルでサポートいたします。お見積りや技術相談など、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

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