「設計した回路の信号波形が振動して安定しない」「オーバーシュートがひどく、誤動作が心配…」
高速デジタル回路やスイッチング電源の設計において、このようなリンギング現象に頭を悩ませた経験はありませんか?リンギングは、見た目の波形の乱れだけでなく、EMIノイズやシステムの不安定化といった深刻な問題を引き起こす厄介な現象です。
この記事では、リンギングが発生するメカニズムから、具体的な対策方法までを分かりやすく解説します。
リンギングとは? なぜ問題になるのか
リンギングとは、デジタル信号が急峻にON/OFF(立ち上がり/立ち下がり)する際、信号が目標の電圧値を通り越してしまい(オーバーシュート/アンダーシュート)、その後しばらく振動する現象のことです 。特に、スイッチング電源や高速なクロック信号を扱う回路で発生しやすくなります。
この波形の「暴れ」を放置すると、以下のような悪影響を及ぼします。
強力なEMI(電磁妨害)ノイズの発生
リンギングの振動成分は高い周波数を含んでおり、これが配線をアンテナ代わりにして強力なノイズを放射します 。
回路の誤動作
振動によってICが電圧レベルを誤認識し、意図しない動作を引き起こす可能性があります。
部品の破損
大きなオーバーシュートは、ICの最大定格電圧を超え、素子を破壊する危険性があります。
リンギングの主な原因は「インピーダンスの不整合」
リンギングが発生する最大の原因は、信号の通り道である基板配線の「インピーダンス不整合」です 。信号を送り出す側のインピーダンスと、信号が伝わる配線(伝送線路)のインピーダンスが異なると、信号のエネルギーが反射してしまい、波形の乱れとなって現れます 。
リンギングを抑制する3つの対策
では、どうすればリンギングを抑えることができるのでしょうか。設計段階で実施できる具体的な対策を3つご紹介します。
1. 基板アートワーク(配線レイアウト)の最適化
最も基本的でコストのかからない対策が、配線レイアウトの最適化です。特に電流ループを小さくすることが重要です。
信号電流は、行き(信号線)と帰り(リターンパス)でループを形成します。このループ面積が大きいと、アンテナのようにノイズを放射しやすくなります 。
また、リターンパスを意識することも重要です。高速な信号線は、必ず直下にGNDプレーンを配置し、最短距離で電流が戻れるようにします 。さらに、ノイズ源となるICの近くに、パスコン(デカップリングコンデンサ)を最短距離で配置し、高速な電流を局所的なループで完結させます。
その他、スイッチング電源のON/OFFは特に大きなノイズ源となります。スイッチング素子とコンデンサの配置・配線は、ノイズ対策の要です。
>>>スイッチング電源とは?発生させるノイズとその対策
2. デカップリングコンデンサの適切な利用
デカップリングコンデンサ(パスコン)は、電源ラインに含まれるノイズを除去し、ICにクリーンな電力を供給するために不可欠です 。ICの電源ピンのできるだけ近くに、容量の小さいコンデンサから順に配置するのが基本です 。これにより、ICが高速でスイッチングする際に発生するノイズを効果的に吸収できます。
3. スナバ回路の追加
どうしてもリンギングが収まらない場合の最終手段として「スナバ回路」があります。これは抵抗(R)とコンデンサ(C)を組み合わせた回路で、リンギングのエネルギーを熱に変換して吸収します 。
ただし、スナバ回路はエネルギーを熱として消費するため、部品が発熱します。この熱が別の問題を引き起こす可能性もあるため、あくまで最終手段と捉え、まずはアートワークの最適化を徹底することが重要です。
リンギング対策は、安定して信頼性の高い電子機器を開発するための鍵となります。設計の初期段階からこれらのポイントを意識することで、手戻りのないスムーズな開発につながります。
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